東京高等裁判所 平成2年(行ケ)140号 判決
第一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)は当事者間に争いがない。
第二 そこで、原告主張の審決の取消事由の当否について判断する。
一 成立に争いのない甲第二号証(特許願書及び添付の明細書並びに図面)によれば、本願発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果は以下のようなものであると認めることができる。
1 技術的課題(目的)
本願発明は、コウジ酸を有効成分として含有せしめたメラニン生成抑制用乳剤に関する(本願明細書第二頁第一〇行ないし第一三行)。
本願発明において有効成分として含有せられるコウジ酸は、従来その薬理作用についてはほとんど知られていなかつた物質である(同第一四行ないし第一六行)。
しかるに本発明者らは、コウジ酸が有する薬理作用について長年にわたつて研究を重ねた結果、コウジ酸自体が人体皮膚に存在するチロジナーゼの作用を阻害して顕著なメラニン生成抑制作用を示し、乳剤として使用するときは、メラニン色素の沈着に起因するシミ、ソバカスなどの防止に極めて有効に作用するという全く新たな事実を見出した(同第三頁第一四行ないし第四頁第一行)ものであり、本願発明は人体に悪影響を及ぼすことなくメラニン生成抑制作用によりメラニン色素の沈着に起因するシミ、ソバカスなどを防止することを技術的課題とする。
2 構成
本願発明は、右の技術的課題(目的)を達成するために本願発明の要旨(特許請求の範囲1)記載の構成(同第一頁第五行、第六行)を採用した。
3 作用効果
本願発明のメラニン生成抑制用乳剤は無毒であつて人体に何ら悪影響を及ぼすことがなく、しかもこれを皮膚に塗布し又はすり込むときは、有効成分のコウジ酸が皮膚に存在するチロジナーゼの作用(皮膚に存在するチロジンからメラニン色素の前駆体であるドーパクロームを生成させる作用)を阻害してメラニンの生成を抑制し、メラニン色素の沈着に起因するシミ、ソバカス、アザなどを充分に防止しうるものであるので、家庭の常備薬などとして極めて有用なものである(同第七頁第九行ないし末行)。
二 一方、成立に争いのない甲第三号証(特許出願公開公報)によれば、先願発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果は以下のようなものであると認めることができる。
1 技術的課題(目的)
先願発明は、ピロン化合物を含有せしめた美白効果及び日焼防止効果の大なる色白化粧料に関する(公報第一頁左欄下から第四行ないし第二行)。
色白の美しい肌にしたいと願うのは女性の常であり、従来よりも過酸化水素、過酸化亜鉛等の過酸化物を配合した化粧料が使用されていた。しかし、右のような過酸化物は極めて不安定な物質であるため、保存性あるいは化粧料への配合性などの点に問題があり、かつ、その美白効果も充分ではなかつた。近年になつてビタミンC、システイン、コロイド硫黄などを配合した化粧料が開発され賞用されているが、これらとてもなお充分に満足しうるものとはいいがたい。
先願発明の発明者らは、人体に好ましくない副作用を有せず、かつすぐれた美白効果を奏する配合剤を見出すべく長年にわたつて研究を重ねてきたところ、ピロン化合物がとりわけすぐれたメラニン生成抑制作用を有し、絶大なる美白効果及び日焼防止効果を奏するという全く新しい事実を見出した(同欄末行ないし同頁右欄下から第二行)ものであり、先願発明はこのように人体に好ましくない副作用を有せずにメラニン生成抑制作用により人体皮膚の美白効果及び日焼防止効果を奏することを技術的課題とする。
2 構成
先願発明は右の技術的課題(目的)を達成するために先願発明の要旨(特許請求の範囲)記載の構成(公報第一頁左欄下から第一三行、第一二行)を採用した。
なお、コウジ酸はピロン化合物に属する(同第二頁左上欄末行ないし右上欄第三行)ものであつて、コウジ酸〇・二重量部を含有せしめたミルクローシヨンが処方例4(同第三頁右上欄第三行ないし第一六行)として、コウジ酸〇・四重量部を含有せしめたバニシングクリームが処方例5(同第一七行ないし同頁左下欄第一一行)として示されている。
3 作用効果
先願発明はそれを構成するピロン化合物がメラニン色素の前駆物質であるドーパクロームの生成を強力に抑制する作用を有し、すぐれた美白効果及び日焼防止効果を奏する(同第二頁左下欄第三行ないし第九行)。
なお、ピロン化合物のうちでは、コウジ酸及びコメニン酸が特に抑制作用が強く先願発明の目的達成のために極めて好ましいものである(同欄第九行ないし第一二行)。
三 相違点に対する判断(一)について
原告は、メラニン生成を抑制して肌の色素を減じるという用途は、病気の治療に当たるのか美容に当たるのか明確に区別できるものではないとした審決の判断の誤りをいう。
成立に争いのない甲第四号証によれば、「医学大辞典」(南山堂 一九七二年九月一日発行)には、「夏日斑」の項に「((雀卵斑、そばかす))針頭大から豌豆大、円形または不正形の茶褐色~暗褐色色素斑が多数、主として顔面、ときに手背などに対側性播種状に来、夏には濃く、冬には淡くなる。女子に多く、五~六歳頃に発して青春期に著しく増強する。後天性色素沈着症である。従来優性遺伝をなすものとされ、光線過敏症が遺伝するものと考えられている。組織的には表皮基底細胞にメラニン増加を見る。日光を避け、ビタミンCを服用、局所的には弱剥離軟膏、三%過酸化水素なども用いられるが、治療は期待できない。」(第二〇二頁左欄第二五行ないし第三五行)と記載され、また、「肝斑」の項に「((褐色斑))顔面特に眼の付近に対側性に、多くは境界明画な色素沈着を生ずる。月経来潮後に現れ、夏期に増悪する。一般に女子に多い。女性ホルモンの異常によると考えられる。また悪液質、中毒、外傷、日光などの関係する場合もある。治療には剥離膏またはスピーゲル膏の塗布、カルボール・エーテル法、内服にはビタミンC、インテレニン、卵巣ホルモンなどを用い、赤外線などを照射する。」(第二六四頁左欄第二二行ないし第三〇行)と記載されていることが認められる。
更に、成立に争いのない甲第七号証によれば、清寺眞外二名編集「基礎皮膚科学」(朝倉書店 昭和四八年九月二〇日発行)には、色素細胞の機能異常性疾患のうち先天的機能亢進症の例として雀卵斑(ソバカス)を、後天的機能亢進症の例として肝斑(シミ)の例を挙げていること、雀卵斑は、「遺伝的素因に基づいて、日光光線の作用により主として露出部に生ずる褐色の小色素斑である。おおむね六~八歳頃に始まり、日光照射を受けると濃色化し、数も増加するが、冬には消退傾向を示す。組織学的に基底細胞層に多数のメラノソーム沈着がみられ、病巣部メラノサイトはより大形でドーバ反応も強陽性であるが、その分布密度はむしろ半減している。」(第二四一頁第七行ないし第一〇行)と記載されており、また、肝斑は、「本症はRiehl黒皮症と異なり、炎症性症状の前駆なしに、漸次境界鮮明な褐色の色素斑が顔面に出現する。妊娠中の婦人や黄体ホルモンを投与されている婦人にかなり発生するが、そうでない婦人やまた男子にもしばしば発生する。(中略)本症の色素沈着はメラノサイトより表皮ケチラノサイトの細胞質内に転送蓄積されたメラノソームの増量によるものである(略)」(第二四三頁下から第三行ないし第二四四頁第二行)と記載されていることが認められる。
また、成立に争いのない甲第五号証によれば、宮崎順一外一名著「皮膚外用剤その作り方と応用」(南山堂 昭和三七年九月二〇日発行)には、「そばかす(夏日斑、雀卵斑)」の治療方法として「〔局所〕直射日光をさけ、一%抗ヒスタミン吸水軟膏、あるいは吸水軟膏を塗布(市販の漂白クリームは使用しないこと)。〔注射〕ビタミンC注一〇〇〇mg隔日に静注。〔内服〕ビタミンC純結晶一日二gを三回に分けて、食前空腹時に服用、二ケ月以上連用する。」(第三九七頁第三五行ないし第三九八頁第四行)と記載され、「しみ(肝斑)」の治療方法として「原因の除去、特に女子生殖器障害、肝臓障害があれば治す。他は雀卵斑の治療に同じ。」(同頁第五行ないし第七行)と記載されていることが認められる。
以上の認定事実によれば、シミ、ソバカスはメラニン色素生成機能亢進による疾患で、いわゆる病気であり、専門的な治療の対象にもなつているものということができる。
しかし、通常の病気が、身体機能の低下や痛みをもたらすものであるのに対し、シミ、ソバカスは身体機能の低下や痛みをもたらすものではなく、単に美容上の欠点であるに止まるものであることは、当裁判所に顕著な事実である。
成立に争いのない甲第六号証によれば、小嶋理一外二名編集「基本皮膚科学Ⅲ」(医歯薬出版株式会社 昭和五三年一〇月一〇日発行)には、肝斑(シミ)について、「美容的に治療が要求されるときは、日光暴露を避けるとともに、RVPlusなど、種々の日光遮断剤が用いられる。すでに発生した病巣については三塩化醋酸、石灰酸、hydroquinone軟膏などの貼用が行われる。」(第四四三頁第一二行ないし第一四行)と記載されており、シミ、ソバカスは病気であるが、美容上の欠点であつて、その治療も美容上の欠点の除去を目的とするものであることを示している。
そして、シミ、ソバカスの症状は一様ではなく、濃く、広い面積にわたる重症のものから薄くそれ程目立たない軽症のものまでありうること、そして、シミ、ソバカスを持つ各人がそれを病気と意識して治療により対処するか、化粧で隠すか、あるいは気にも止めずに放置するかは、その症状の程度や、性別、年令等によりまちまちであり、各人の主観により大きく左右されることも、当裁判所に顕著な事実である。
したがつて、シミ、ソバカスは、医学的には病気であるが、一般人がこれを病気と意識するか単に美容上の欠点にすぎないと意識するかは、各人の主観により左右されるものということができる。
そして、前認定のとおり、本願発明の乳剤のシミ、ソバカスの治療効果も、先願発明の化粧料の美白、日焼防止効果もコウジ酸(ピロン化合物)がメラニン色素の前駆体であるドーパクロームの生成を抑制することによつてもたらされるものである。
先願明細書には、先願発明の効果としては美白効果及び日焼防止効果のみしか記載されていないが、本願発明と同様にピロン化合物であるコウジ酸のメラニン生成抑制効果を用いた化粧料であるから、それがシミ、ソバカス発生を防止する効果をも奏することができるものであることは、当業者であれば容易に看取することができるものであつて、両発明の奏する作用効果に実質的な差違はない。
因みに、成立に争いのない乙第三号証の一ないし三によれば、香粧品原料研究開発専門誌である「FRAGRANCE JOURNAL」第七一号(フレイグランス ジヤーナル社 昭和六〇年三月二五日発行)によれば、現在、日焼けによるシミ、ソバカスを防ぐ薬用化粧品としての化粧水、クリーム、乳液は、薬事法の適用上は医薬部外品(同法第二条第二項)に属している旨が記載されている(第一二頁右欄4(3)、(4))ことが認められるが、このことは、日焼けを防止することによりシミ、ソバカスを防ぐことができることを示しているものである。
以上のことからすると、メラニン生成を抑制して肌の色素を減ずるという用途は、病気の治療のためでもあり、また、美容のためでもありえるもので、審決が右用途は、病気の治療に当たるのか美容に当たるのか明確に区別できるものではないと判断したことは正当である。
これに対し、原告は、特許法上、医薬は、「人の病気の診断、治療、処置又は予防のために使用する物」と明確に定義されていること、特許庁の審査基準上は医薬と化粧料とは区別され、「ひやけ止用化粧品」や「漂白クリーム」は化粧品として扱われているとして、審決の右判断を誤りとする。
しかし、まず特許法第六九条第三項における医薬の定義は、特許権の及ぶ範囲を規定するにあたつての定義にすぎないものであつて、具体的な発明の同一性の有無の判断に何ら関係するものではない(審決も本願発明のメラニン生成抑制用乳剤が医薬であることは認めている)。
また、成立に争いのない甲第一一号証によれば、特許庁の審査基準では、昭和五〇年法律第四六号による改正前の特許法第三二条第二号における医薬について解釈を示し、該当、非該当の各例を示しているが、「ひやけ止用化粧品」や「漂白クリーム」は医薬に該当しないものとして扱うことが示されていたことが認められ、また、成立に争いのない甲第一二号証によれば、化粧料についての審査基準において、化粧品とは「人の身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用して、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、皮膚、毛髪または歯をすこやかに保ち、または容ぼうを変えることを目的とするものを指す。」(産〔3〕―13―1第一〇行ないし第一二行)と定義され、また、旧特許法第三二条第二号の医薬に該当しないものの例として、「ひやけ止め用クリーム」及び「漂白化粧用クリーム」が示されていることが認められる。
右認定事実によれば、特許庁における審査基準においては、美白効果又は日焼防止効果を発揮する物は、医薬ではなく、化粧料に該当するものとして、その特許要件の審査にあたつていたことを認めることができる(原告の提出した右各審査基準は昭和五〇年法律第四六号による改正前の特許法の時代におけるものであるが、弁論の全趣旨に照らせば、現行特許法のもとにおいても化粧品の定義等の実質は変わつていないものと推測される。)。
しかし、右医薬についての審査基準には、旧特許法第三二条第二号の医薬に該当する物の例を詳細に示しているが、「シミ、ソバカスの治療に用いる物」が医薬に該当することも示されていないのであり、原告の主張するように特許庁の審査基準において肌に塗布してメラニン生成を抑制する物が医薬と化粧料とに明確に区別されているとは直ちに認めることはできないのみならず、そもそも、右各審査基準は、ある発明が医薬に該当して旧特許法第三二条第二号により特許が認められないものかどうか等の判断について特許庁の内部の事務処理準則として定めているものであり、医薬と称し、あるいは化粧料と称する具体的な発明が同一か否かの判断とは直ちに一致するものではないのであるから、右審査基準を根拠に審決の前記判断の誤りをいう原告の主張は理由がない。
四 相違点に対する判断の誤り(二)
原告は、審決が、本願明細書に記載された試験例においては、任意に選んだ人を対象としており、特に病人を対象にしているものではないと判断したことの誤りを主張する。
前掲甲第二号証によれば、本願明細書には、「実施例1でえたメラニン生成用乳剤について製造例1でえたコウジ酸水溶液と共に、任意に選んだ一〇〇人の男女(男五〇人、女五〇人、年令二〇ないし五〇歳の間でほぼ均一に抽出)に三カ月間使用してもらい、シミソバカスの防止効果についてのアンケートをとつた。その結果を第2表に示す。」(第一六頁第一五行ないし第一七頁初行)と記載され、第2表で、「シミ、ソバカスが淡くなり、ほとんど目立たなくなつた」、「シミ、ソバカスが淡くなつたように感じた人数」、「何ら変化がなかつた人数」、「無回答(使用しなかつた人)」、「肌アレ、皮膚のカブレなどを生じた」の別に回答人数を記載していることを認めることができる。
この試験は、事柄の性質上、現在シミ、ソバカスを患つている人を対象にしたものであることは明らかであり、右認定の回答事項もこれを示している。
これに対して、審決は、右試験は、任意に選んだ人を対象にしており、特に病人を対象にしたものではないと判断している。
審決の右の趣旨は必ずしも明らかではないが、勿論、試験をするに当たりおよそ何らの基準もなく被験者を選んだという趣旨でないことは当然であり、これは、治療を要する病人といえるほどの重症のシミ、ソバカスを患つている人のみを対象にしたものではないという趣旨であると認められる。
そして、この点について本願明細書では、特に重症の人のみを対象にした旨の記載はないのであるから、表現の妥当性に問題はあるも、審決の右認定を誤りとすることはできない。
よつて、原告の主張は理由がない。
五 相違点についての判断の誤り(三)
原告は、本願発明と先願発明とでコウジ酸の使用量を明確に区別できないとした審決の判断を誤りと主張する。
しかし、前掲甲第二号証及び第三号証によれば、本願発明と先願発明のそれぞれの特許請求の範囲には、コウジ酸(ピロン化合物)の使用量について何ら特定はされていないのみならず、先願明細書の発明の詳細な説明においては「化粧料基剤にピロン含有物を含有せしめて本発明の色白化粧料をうるばあい、その含有量は五%以下、なかんづく〇・〇一ないし二・〇%程度である」(公報第二頁左下欄第一八行ないし右欄初行)と記載されており、また、本願明細書の発明の詳細な説明においては「本発明のメラニン生成抑制用乳剤におけるコウジ酸の有効量は、乳剤の約〇・一ないし一〇%、好ましくは一・〇ないし五・〇%である。」(明細書第六頁第一七行ないし第一九行)と記載されていることが認められ、それぞれの明細書の発明の詳細な説明において記載されているコウジ酸の使用量は重複していることからして、本願発明と先願発明とでコウジ酸の使用量を明確に区別できないとした審決の認定に何ら誤りはない。
原告は、両発明の明細書に記載された実施例やこれに基づく実験報告書を挙げ、本願発明は医薬であり、化粧料である先願発明とは処方例が異なることから、皮膚透過性の有効性が異なる旨るる主張する。
審決は、コウジ酸の使用量が本願発明と先願発明とで明確に区別することができないといつているにすぎず、それ以上、処方の違いやコウジ酸の皮膚透過性の違いについていつているものではないから、原告の右主張は、そもそも的外れであるのみならず、両発明の特許請求の範囲には、コウジ酸(ピロン化合物)以外にいかなる成分を用いるかは何ら記載されていないのであるから、本願発明と先願発明とで処方が異なり、あるいは皮膚透過性等の有効性が異なるということはできない。
原告は、別紙成分表に対比して示されるように本願発明と先願発明の処方が異なる旨主張するが、これらはいずれも実施例であつて、いずれの発明ともその処方に限定されるものではない(両発明とも特許請求の範囲においてコウジ酸以外の成分及びその成分比を特定していない。)ので、この処方の相違をもつて両発明の構成が異なり、あるいは作用効果が異なるとはいえないことは明らかである。
そして、その実施例をみても、本願発明の実施例1がなにゆえに医薬としての処方であつて化粧料の処方ではありえないのか、先願発明の処方例4がなにゆえに化粧料としての処方であつて医薬の処方ではありえないのか明確な根拠は示されていない。
原告は、本願発明の実施例1の方が先願発明の処方例4より皮膚透過性が高いと主張するが、それは単に両者のみを比較して皮膚透過性の高低をいうだけであつて、客観的に医薬と化粧料とを区別する皮膚透過性や基剤、吸収助剤その他の成分の基準が存在するとは考えられない。
よつて、本願発明と先願発明の処方例が異なることを根拠に審決の前記判断の誤りをいう原告の主張は理由がない。
六 以上のとおり、審決が相違点についての判断において示した理由はいずれも正当であり、また、これらのことから、本願発明におけるメラニン生成抑制用乳剤と先願発明の色白化粧料としてのミルクローシヨンやクリームとは、単に表現が異なるのみで発明として区別することができないので、本願発明と先願発明とは実質的に同一であると判断したことに誤りはない。
第三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却する。
〔編注〕本願発明の要旨は左のとおりである。
コウジ酸を有効成分として含有せしめたことを特徴とするメラニン生成抑制用乳剤